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自己防衛欲求と消費行動──緊急事態で財布の紐が緩むのはなぜ?

人々は何にお金を出すのだろうか?」という問いは、経済学者やビジネスパーソンにとって永遠の課題である。  

 

誰しも、安価で実用性があり、加えて質が高ければヒットすると考えるが、商品が単に存在しているだけでは広まらない。

勿論、チョコレートのようなお馴染みの商品であれば、ある程度の売り上げ予想が立てられるかもしれない。しかし、中には人類が初めて触れる商品・サービスもある。  

 

例えば、iPhoneがそうだった。かつての携帯電話は、画面と物理ボタンによって構成されていたが、スティーブ・ジョブズはこれに大幅な改変を行った。

今や誰もが知っているように、ボタンを最小限に減らし、手のひらサイズの板にしたのだ。加えて、パソコン並みの機能を盛り込み、それ無しでは生きられないと思わせるほど人々の欲求を開拓したのである。  

 

ビジネス界では、しばしば「欲求の開拓」がキーワードになる。新参者が既に存在する欲求の中で戦うと十中八九大手に勝てないからだ。だからこそ、消耗戦を避け、新たなフィールドを築くことで莫大な先駆者利益を狙うのだ──これは、ブルーオーシャン戦略と呼ばれる。

生物が生き延びるための指針が欲求である。言い換えれば、欲求は遺伝子に組み込まれているものだ。食欲を感じるから人間はエネルギーが枯渇するだいぶ手前で補給できる。  

 

では、ジョブズをはじめとするはブルーオーシャン戦略家達は、その都度人々の遺伝子を書き換えてきたのだろうか。それとも、我々自ら設計図を書き直しているとでも言うのか。

そもそも、欲求がゼロであるということはありえない。例え人類が初めて遭遇するものであったとしても、「欲しい」と感じ、購入に至るまでには、古くから存在する何らかの根源的的欲求に支えられているものだ。

ヒットメーカーが行ったのは、遺伝子の改編ではなく、新たな概念を太古から受け継いだ欲求と結びつけただけだ。しかし、それだけでは足りない。欲求は常に剥き出しの状態ではない。駆り立てる同線も同時に整備する必要がある。  

 

現に、ヒットするかは宣伝方法や社会的状況に依存している。ジョブズは革命的発明に力を入れていたが、それ以上に商品の見せ方にも熱意を注いでいた(iPhoneを発表したジョブズのプレゼンは今でも有名だ)。

 

 

つまり、人に物を売る際には、欲求の特定に加えて心を掻き立てるメカニズムの理解が欠かせないのである。

ビジネス界では、人間のニーズをマズローの欲求ピラミッドをベースに考える事が多いが、これは根拠の乏しい古い枠組みとされている。そこで、以前本サイトでは、生物学的観点を取り入れた欲求モデルを紹介した(詳しくは『モチベーションの基礎──進化的欲求ピラミッドで行動の起源に目を向ける』を参照のこと)。  

 

今回は、新たな欲求モデル──生物の根源的な欲求──をベースに、“消費”という合理的に見えて不可解な現象を紐解いていこう、というのが狙いだ。  

 

本稿は、商品やサービスの提供は勿論のこと、賢い買い物術にも応用が効く。

賢くお金を使うとは即ち、欲求を自覚して理性的な判断を下すことにある。  

 

自身を動かす見えざる影響力に気づけなければ、いつまで経っても無駄な出費は減らせないだろう。  

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